9月30日 ――地球はホントに青かった? 9月30日。午前6時7分。 朝のニュース番組で、ちょっとだけ面白いニュースがあった。 いや、面白いと言っては失礼なんだが。 今日未明。種子島宇宙センターで完成したばかりのロケットが打ち上げられてしまったのだという。 どうも、何者かにシステムをハッキングおよびクラッキングされた結果なのだとか。 「…………ふーん」 卵かけご飯とインスタントの味噌汁をずずっと啜りながら、私はぼんやりとそのニュースを見る。 ロケット、打ち上げって言ったらあの台詞が有名なんだよなあ。 確か『地球は青かった』っての。ガガーリンの台詞だっけか。 ちょっと違う台詞かもしれないから、仕事から帰ってきたら改めて調べてみよう。 もしゃもしゃ、と行儀悪く飯を食いながら私はテレビを見つつ、考える。 ホントに地球は、青いだけなんだろうか? 地球には、人間やら動物やら植物やら建物やらがひしめき合ってるっていうのに。 植物一つとっても、色々な色の花や木が生きているっていうのに。 まあ、そんなの宇宙から地球を見た人じゃないとわからんわな。 それでも、私は思う。 上から見下ろしただけで、全部わかるわけじゃないんだろうな、と。 顕微鏡で微生物を見る時みたいに、近くまで行かなきゃ見えないものもあるんだろうなと。 俯瞰で宇宙船から見た青は、やっぱり地球の一面でしかないわけで。 それが絶対的な価値観にはなりえないんじゃないかと。 インスタントの塩辛い味噌汁を啜りながら、私はそんな事を考えた。 ……仕事に出かける直前だってのに何をプチ哲学してんだか。ガラじゃないのに。 ロケット盗難のニュースが終わり、次は衛星クラッキング事件の続報が入る。 こういうのやる人って、宇宙が好きなのかな嫌いなのかな。 それとも、地球が嫌いなのかな? そんな事を一瞬だけ考えたが、すぐにその考えを振り切って家を出ることにした。 私はいつものように薬を1錠飲み、家を出る。 あー、そろそろ誘導棒と安全靴変えないとなあ、ボロくなってきた。なんて思いながら。 次の日、何が起こるかなんて。 誰が想像できたんだ? 『世界の終わりの始まりは』へ続く。