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第2章 現在、判明している症例(各シンドロームの紹介、代表エフェクトを軽く説明))
開幕-授業再開-
UGNの訓練室に据え付けられた巨大なテレビモニター。
数秒間真っ青な画面が映し出された後、ぬいぐるみ5体と4人の人物がテーブルに写っている光景が映し出される。
雅之:というわけで、だ。サンプルとなるカルテをかき集めてきた。これでやっと授業が再開出来る。
慎一:良かったねー。おめでとー。じゃあ早速授業を始めるんだね?
創一:今回は説明する項目が多くなる。何度か見直せば理解度も高まるはずだ。
誠:シンドロームって12種類もあったんすねえ……なんか説明がめんどくさそうっす。
雅之:(ハリセン錬成、誠にべしっとツッコミ)ええい、講師役が一番大変なんだぞ。弱音を吐くなっ。
……さて、改めて授業を始めよう。
???:(ひつじさんのぬいぐるみは沈黙を保っている)
基本のエフェクト
雅之:ではまず、シンドロームの説明をする前にしておく事がある。
誠:……?なんかあったっすか?
創一:《リザレクト》と《ワーディング》についての説明、だな?
慎一:ああ、そっか。よく使われるエフェクトだもんね。
雅之:その通りだ。やはり我々オーヴァードが最も使うエフェクトだからな。説明せねばなるまい。
(カメラ目線で)では諸君、きちんと聞いておくように。
リザレクト
雅之:《リザレクト》と後述する《ワーディング》は、我々オーヴァードがすべからく保有する
基本的なエフェクトだ。というよりはむしろ基本的な技能と言うべきかもしれん。
慎一:死ぬほど大怪我しても治っちゃうんだよ。
人間に元々備わっている自然治癒力の強力版みたいなものって言えばいいかな?
誠:でも、ハタから見てると不気味っすよね。怪我がみるみるうちに治るってのは。
創一:《リザレクト》は俺達オーヴァードが『死ににくい』理由でもあり、『化け物』と罵られる
原因にもなりやすいエフェクトでもある。皮肉な話だ。
ワーディング
慎一:オーヴァードとそうじゃない人を見分ける為にぼく達が使う『なわばり』みたいなものだよ。
あ、他にも非オーヴァードに見られたくない時に使ったりもするなぁ。
んー、わかりやすく言うとファンタジーに出てくる結界みたいなもの、かな。『人払いの結界』みたいな感じ?
………えーと、この説明だけじゃちょっとわかりにくいね。
誠:あ、これは僕が説明していいっすか?(目をきらきらさせている)
雅之:(訝しげな顔をしながら)……まあ、構わんが。
誠:例えば、僕が餃子でもガーリックステーキでもいいからにんにく料理をたらふく食べるっす。
で、周りの人に息を吹きかけるっす。にんにく料理が嫌いな人ないしは食べてない人は嫌がってどくっす。
にんにく料理を食べている人は息を吹きかけてもどかないっす。嗅覚が若干麻痺してるっすからね。
創一:……(かなり微妙な表情をしている)
雅之:(おもむろに白いチョークを錬成、誠に向かって投げる)
誠:(チョークが頭に直撃)い、痛いっす!わかりやすい説明にしたのにその仕打ちはひどいっす!
雅之:(何事も無かったかのように誠の抗議をスルー)
さて。『《ワーディング》はオーヴァードと非オーヴァードを見つける為の手段』であると説明していたな。
最後に、このエフェクトの危険性を説明しておく事にしよう。
《ワーディング》を使用すると、非オーヴァードは何らかの形で意識を失う、ないしは行動不能になる。
つまり、この間何らかのアクシデントが起こると彼らは対処できない、と言う事だ。
慎一:例えば?
雅之:例を上げてみよう。例えば、交差点のど真ん中で《ワーディング》を使うとする。
当然、非オーヴァードは何も出来なくなる。車と歩行者が行き交っている中でそんな事をしてみろ。
運転者が気絶、歩行者も行動不能……あっという間に大惨事だ。
誠:うわあ……怖いっすね、《ワーディング》って。
雅之:わかれば宜しい。《ワーディング》を使う際は、周囲の状況を考えてからにしろ。濫用は避けるように、以上だ。
シンドロームの説明……の前に
慎一:あれ?まだ説明する事あったっけ?
雅之:オーヴァードが扱うエフェクトと、オーヴァード、非オーヴァード共に普段の生活でも使う一般技術……
すなわち「技能」は密接な関わりを持っているからな。先に説明しておいたほうがいいだろう。
誠:むー、本題に入るまでが長いっす。あんまり長いと視聴者の皆さんが途中でスイッチ切っちゃうっす。
創一:まあ、これも必要な説明だと思うぞ。……ああ、おそらく「技能」の説明は次回の授業
(第3章 カルテ作成)でも触れることになる。内容が重複するがご了承いただきたい。
雅之:というわけで、だ。
我々が日常生活で扱う主要な基礎的能力(【肉体】、【感覚】、【精神】、【社会】)とそれぞれ対応する
一般技術(技能)を掲載している。目を通しておいて欲しい。
【肉体】
<白兵>
<白兵>特殊(カバーリング)
<回避>(基本的に攻撃に対する回避はこれで行う)
<運動>(【肉体】特殊。特定のエフェクトを使用する際、攻撃ないしは回避用に使用する)
<耐性>(ブラム=ストーカーおよびエグザイルの一部エフェクトに対応。通常は薬品などの耐性を示す)
【感覚】
<射撃>(特定のエフェクト使用時、回避判定にも使える)
<知覚>(隠れたモノを発見する為に使用。エンジェルハィロゥの特殊回避用エフェクトにも使う)
<隠密>(人知れず隠れて行動する為に使用)
<運転>攻撃(【感覚】特殊)
【精神】
<RC>(攻撃)
<RC>(支援)
(<RC>→『レネゲイド・コントロール』と読む。読んで字の如くレネゲイドウイルスを制御する為の力)
<意志>(ブラム=ストーカー、キュマイラ及びノイマンの特定エフェクト使用時に関わってくる)
【社会】
<交渉>(支援)
<交渉>(攻撃)
社会を使用する戦闘以外の技能
<調達>(アイテムの調達に必須。ただし強力なアイテムほど調達率は低くなる。ノイマンシンドロームが若干有利か?)
<情報:>(主に噂話、ウェブ、ビジネス、警察、軍事、UGN、報道、学問、裏社会。
それぞれ<情報:○○>のように記載する。)
慎一:ふえー、「技能」っていっぱいあるんだねぇ。
雅之:ちなみに、上のリストには記載していないが<RC>は我々が衝動に耐え切る為に必要不可欠な技能でもある。
『力』の根源たる渇望や欲望に押し流されない為には、日頃からレネゲイドのコントロールを行っておくべきなのだろう。
(羊さん通訳:「衝動判定」時に<RC>を使用するのです。衝動判定についての詳しい説明は別の章で)
誠:これでやっとシンドロームの説明に入れるっすか?
創一:らしいな。前置きは少々長くなったが仕方あるまい。始めてくれ(視線で促す)
シンドロームの説明
雅之:これでようやくシンドロームの説明に入れるな。
前の授業で説明した通り、現在確認されているシンドロームは12種類。
なおかつ、前回は説明していなかったがどのシンドロームでも使う事が出来る「一般エフェクト」というものも存在する。
前述していた《リザレクト》および《ワーディング》も一般エフェクトに分類される。
もう一度、おさらいとしてシンドロームの一覧を掲載する。目を通しておくように。
エンジェルハィロゥ
ブラックドッグ
ブラム=ストーカー
キュマイラ
エグザイル
ハヌマーン
モルフェウス
ノイマン
オルクス
サラマンダー
ソラリス
バロール
一般エフェクト(シンドロームに関係なく習得可能なエフェクト群)
慎一:それじゃ、やっとシンドロームの説明に入れるねっ
誠:レクチャー、よろしく頼むっす。正直自分が発症しているシンドローム以外ほとんどわからないっす!(無意味に威張る)
創一:……(無言で頭を抱える)まあ、モニター前の皆と一緒にレクチャーを受けておいてくれ。
他のシンドロームや特徴を覚えておかねば、戦闘時にまともな対処は出来んぞ。
雅之:さて。次のレクチャーからはカルテを交えて説明を行う。
同一シンドロームの組み合わせでも発症形態が異なるケースがあるのでサンプルとなるカルテは多めに用意した。
何度か同じカルテが出てくる事もあるかもしれないが、比較する為の措置なのでご了承願おう。
参考までに、我々4人のカルテも出しておく。
見出しはコードネーム、名前、シンドローム、戦闘タイプ、強さの基準(消費経験点)の順番で表記しておいた。
“静かなる読み手”白河 雅之 モルフェウス/ソラリス:RC支援、情報収集および交渉攻撃型(使用経験点50)
“血染めの拳”久川 慎一 ブラム=ストーカー/ノイマン:白兵(従者支援付き)型(使用経験点24)
“見えざる弾丸”波多野 創一 キュマイラ/ノイマン:白兵、射撃、情報収集(【精神】使用)型(使用経験点31)
“無銘の刀”小野寺 誠 エグザイル/モルフェウス:白兵型(使用経験点25)
慎一:これ見てるとさ、確かに人員の偏りをまざまざと思い知らされるねえ(カルテをまじまじと見る)
雅之:白兵型が3人だからな、偏りもいいところだ。……本気で思う。責任者出て来い。(ぶるぶると拳を震わせる)
エンジェルハィロゥ
雅之:まずはこのシンドロームからだな。光を操る事を得意とするシンドロームだ。
RC(レネゲイド・コントロール)能力による光線技を得意とするオーヴァードが多い。
超広範囲攻撃用のエフェクト、着込んでいる防具の厚みを無視して攻撃を加えるエフェクトを保有している。
射撃ないしRC攻撃に向いているな。白兵も出来なくはないが、その場合クロスブリードの方がポテンシャルは高い。
慎一:目からビーム出したりとか?
創一:……別にビームは目から出すと決まっているわけではないが……(微妙な表情)
基本的にこのシンドロームの発症者は射撃能力および防御・回避・霍乱能力にも優れている。
『特殊な発症』をしたエンジェルハィロゥシンドロームのオーヴァードはさらに厄介な回避能力を持っているが、
これは後の授業(第4章を予定)で説明してもらう事にしよう。
雅之:光という目に見えないものを操るせいか、目に見えない危険を察知する能力や
隠れた敵を発見する能力も持ち合わせている。
敵に回すと厄介なシンドロームの一つだな。
誠:んー、でもなんかまだイメージしにくいっす。具体的にどんな感じっすか?
雅之:そうだな……エンジェルハィロゥの能力で目に見えるかつ説明しやすいモノといえば光線による攻撃、
幻影・残像の創造……と言ったところか。
慎一:色々出来るんだね、エンジェルハィロゥのシンドローム持ちって。
雅之:さて、いくつかわかりやすい実例を上げる事にしよう。
まず光線による攻撃。レーザーの照射装置がこれと同じ働きを持つ。
エンジェルハィロゥのRC型はいわば人間レーザー照射装置、というわけだな。
破壊そのものをもたらす光線を発射する《破壊の光》、RC攻撃の範囲を常識はずれな区域まで拡大する《スターダストレイン》、
いかに防具を装着していてもその隙間を一点集中攻撃する《ピンポイント・レーザー》、
障害物に攻撃を反射させてから敵を攻撃する《リフレクト・レーザー》、レーザーを使った痛み分けの捨て身カウンター技《鏡の盾》などが
このカテゴリーに分類されるエフェクトだ。
見事なまでに汎用破壊兵器としての能力をいかんなく発揮できる。ピュアブリード、クロスブリード関係なく、な。
誠:(あー、RC型エンジェルハィロゥのオーヴァードを敵に回すような発言……)ぼそぼそ。
雅之:(とりあえず誠の発言は聞き流している)
で、次。幻影、残像の創造。ところで諸君、立体ホログラムや蜃気楼がどんなものかはわかるか?
創一:立体ホログラムはあたかもそこに物体があるように見せかける画像の一種。
あたかも手に取れそうだと思い込めるほど精密なモノもある。
慎一:えーと、蜃気楼はありえない場所に建物やら何やらが浮かんで見えたりする現象だね。
暖かい空気と冷たい空気の層の境目で光の屈折が起きて虚像が見えるんだよ。
雅之:大体そんなものだな。詳しくは検索エンジン等で調べておいてくれ。
このカテゴリになるエフェクトといえば周囲の屈折率を変化させて光を跳ね返す《鏡の館》、
遠くの風景を蜃気楼のように投影する《水晶の眼》、光を操って姿のみを自在に変えられる《天使の外套》、
光を屈折させてダメージを軽減させる《プリズム》、鏡のようなものを空中に浮かべて相手を幻惑させつつ攻撃をかわす《ミラー・コート》、
光の屈折率を変えて姿を隠す《光の衣》、光を集めて残像と入れ替わる《光の守護》か。
ああ、そうだ。上にあげたエフェクトの詳しい効果はUGNからもらった資料(DX2ルールブック)を読んでおいてくれ。
創一:このシンドロームの保持者はやはり攻守共に優れているな。攻撃の破壊力には若干欠けるが、
その分は攻撃手段の多様性で十分カバー出来ているからな。
誠:最後に、サンプルになるカルテの提示っすね。
雅之:ああ、そうしよう。下記にまとめたカルテをリンクしておいたので見比べておいてくれ。
同一のシンドローム保持者でも戦闘タイプは千差万別だからな。
エンジェルハィロゥシンドローム発症者
ブラックドッグ
雅之:では次。雷のように強力な電撃を操る、ないしは機械操作関係を得意とするシンドロームだ。
余談だが、このシンドロームを発症した者は体の一部ないしほとんどを機械化している事が多いそうだ。
白兵型ないし射撃型は腕に武器を内蔵している者が大半だ。体の中に隠す事が出来る分、面倒がなくていいらしい。
創一:ちなみに前者はRC型、後者は白兵及び射撃だな。基本的に交渉以外の能力は全て揃っている。
ピュアブリードでもクロスブリードでも遜色の無い戦いが出来るだろう。
慎一:機械操作系だと、体内の電流を使って機械類を故障させちゃう《ショート》、
コンピュータで管理しているセキュリティを無効化しちゃう《セキュリティカット》、
周囲を飛び交っている電波から直接情報を得る能力《タッピング》もあるんだよ。……《タッピング》使いって電波君?
誠:電波怖いっす、電波怖いっす……(何か思い出してがたがた震えている)
雅之:まあ、そこで震えているのはほっといて、だ。
一番向いているのは射撃型だ。
少しばかり大技が足りない気はするが、マイナーで射撃系の命中率を高めるエフェクトもあり、
低いコストでそこそこ高い戦闘力を保有できるのが強みだな。
と言いながら、何やら資料をぱらぱらとめくっている。
創一:白兵も悪くはない。帯電した武器で相手の防御を突き崩す大技《バリアクラッカー》があるからな。
ただ、ある種ブラックドッグ共通の大技《フルインストール》を使えない場合はポテンシャルが少々低めだからな。
ピュアブリードのオーヴァードは大変かもしれん。
雅之:同じく射撃を得意とする、かつブラックドッグの弱点を補えるエンジェルハィロゥか
確実に「当てる」為のエフェクトを多く所持するノイマンを併発しているケースが多いらしいな、統計的には。
RCもそれなりに戦えるのだが、これも少し弱点があってな。誰か説明出来るか?
慎一:攻撃力は高いけど基本的にそれ以外が犠牲になってるね。
命中精度がちょっと低めだし、接近されると使えなくなるし。
雅之:正解。やはりRC型のブラックドッグピュアブリードのオーヴァードは厳しい戦いを強いられる事になるだろう。
誠:あ、でも空を飛べるエフェクト《イオノクラフト》で飛んで行っちゃえばいいんじゃないすか?
空を飛べるエフェクト……浪漫っす。
創一:ブラックドッグシンドロームのオーヴァードは雷を伴う雨雲や架空作品で出てくる一般的な
ロボットないしサイボーグのような能力を保有する者達の集団だと言えるな。極論だが。
雅之:まあ、射撃型が比較的多く、次いでRC攻撃型、少々比率は低いが白兵型ないしカバーリング型の
オーヴァードもいる。まあどのタイプでも戦えない事はないが、射撃以外はクロスブリードの方が総合的な戦闘力は高いようだ。
さて、最後にカルテの提示だな。見比べておいて欲しい。
ブラックドッグシンドローム発症者
ブラム=ストーカー
雅之:次はブラム=ストーカーだな。慎一、説明出来るか?
慎一:うん、自分が発症しているシンドロームだから大丈夫だよ。
ええとね、基本的に血を操るシンドロームなんだ。血で鎧や剣を作ったり、血で『従者』っていう自動で動くお人形さんみたいなのを作ったり、
血の粘度を高める事によって相手の行動を阻害したり……
(段々顔色が悪くなってくる)
創一:どうした?顔色が悪いぞ。
誠:その子、ブラム=ストーカーだけど血に弱いみたいっす。本人の適性に合ったシンドロームが発症するとは限らないんすねえ(ため息)
慎一:(くらくら、ぱたん)
雅之:ああ、案の定倒れてしまったな。続きは私が説明しよう(海よりも深いため息)
血で剣を作り出す《赫き剣》、鎧を作る《赫き鎧》、そして血で自動人形に似たモノを作り出す《血の従者》が代表的なエフェクトと言っていいだろう。
他に、手の平から相手の水分……血かもしれんな……を吸い取って自分の体力を回復する《渇きの主》もブラム=ストーカーらしいエフェクトと言えるだろう。
このシンドロームの主な戦闘タイプ、慎一の代わりに説明出来るか?(と、誠の方を見る)
誠:うー、説明は苦手っす。(頭かきかき)
白兵型ないしは従者を使った特殊な戦闘タイプ、っすか?自爆したりとか。
創一:まあ、ぎりぎり及第点か。射撃、RCも不得意ではないがどうにも火力不足のようでな。
まずクロスブリードでなければ威力を発揮しない。まあ、白兵型や従者使用型も似たようなものだが。
雅之:このシンドロームは妨害系エフェクトも多く保有している。RC型のオーヴァードは色々試してみるといいかもしれんな。
ブラム=ストーカーと相性のいいシンドロームはエグザイル、ノイマン、ソラリス、バロール辺りか。
無論、他のシンドロームを併発しているオーヴァードでも強い奴はごろごろいるのでこの説明はあくまで参考程度に止めておいてもらいたい。
創一:戦闘で扱うモノに限って言えば攻撃力を上げる、カバーリング能力を上げる、白兵や射撃の攻撃範囲を拡大するエフェクト等だな。
他、従者との協力攻撃で相手の回避を妨げる《クロスアタック》、従者に自爆させて相手にダメージを与える荒業エフェクト《闇夜の呪い》もある。
誠:そういえば、従者って攻撃以外に何か出来るんすか?
慎一:(まだ気絶中)
雅之:まあ、従者使役型と一口に言っても従者に戦闘をまかせっきりにするケースと本体の攻撃時に補助として扱うケースの二種類ある。
そこで気絶している慎一の場合は後者だな。
そして、従者のみが扱えるエフェクトは戦闘用のみではないぞ。むしろそれ以外の局面で使うエフェクトには実に面白いエフェクトがある。
誠:むー、どんなんすか?見当つかないっす。
創一:従者に羽根を生やして飛ばせる《コウモリの羽根》、従者が身を隠す際に使用する《暗闇に潜む者》、
従者の主と別行動を可能にする《主人への忠誠》、特定の人物に化けて相手を欺く《不死者の人形》だな。
雅之:この手のエフェクトがあるからエグザイルとの相性が良い、と言ったのだ。
フェイクやはったりをかますにはぴったりだからな。無論、戦闘面でもバランスがいい事は言うまでも無い。
他に、死亡した非オーヴァードの人間を復活させる事が出来る唯一のエフェクト《抱擁》を使えることも特筆しておくべきだな。
下手をすると行使した対象がオーヴァードとして覚醒、かつ即ジャーム化という危険性もあるので無闇に行使するべきではない。
しかし、それでも『生き返って欲しい』のなら……『最悪の事態』を覚悟して使うべきだな。
誠:で、ブラム=ストーカーのオーヴァードってどんなのをイメージすればいいんすか?
創一:そうだな……既存作品ではあるがシンドロームの語源ともなったブラム=ストーカーが執筆した作品
『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物(?)、ドラキュラを連想するといい。
血を啜り、多くの手下を操り、しぶとく何度も復活するさまはブラム=ストーカーシンドロームの特徴そのままの描写だと言える。
雅之:他のシンドロームと違って、死亡状態に追い込んでも安心できないからな。
適当にタイミングを見計らって《不死不滅》により復活、逃亡するジャームがいたというケースが多いようだ。
最も倒しにくいタイプだな。一度倒した後も油断はするな。
誠:……(気絶している慎一を見ながら)この子を見てると、あんまりそういうイメージ湧かないっすね。
慎一:きゅー……(まだ気絶中)
雅之:最後に、カルテの提示だな。何故か他のシンドロームより発症者が少ないようだ。
ブラム=ストーカーシンドローム発症者
キュマイラ
雅之:次はキュマイラだな。(創一に向かって)説明してもらえるか?
創一:体の一部、ないし全身を獣に変化させて戦うシンドロームだ。
色々な獣の特徴が混じり合って発現する為にギリシャ神話に登場する架空の獣、キュマイラと呼ばれるようになったのだろうな。
代表的なエフェクトは全身を獣に変化させて肉体能力を大幅に引き上げる《完全獣化》、《完全獣化》状態でその攻撃力を最大限に引き出す《神獣撃》だろうか。
慎一:うーん、おはよう……(気絶から回復したらしい)キュマイラって基本的に白兵型が一番多いよね。
基本的に、白兵タイプ以外で『使える』エフェクトってあんまりないし。
肉体を変化させて、白兵の攻撃力を引き上げるエフェクトに特化したシンドロームだから。
誠:クロスブリードなら雄叫びで相手に畏怖の念を与える《魔獣の咆哮》や筋肉を硬直させてダメージを受けないようにする
《軍神の守り》も面白そうなんすけどねえ。
雅之:射撃系のエフェクトはその辺にあるモノをぶん投げて攻撃する《飛礫》くらいだからな。
RC型、交渉型もほぼ問題外。ピュアブリードの場合は白兵型一辺倒となるだろう。
慎一:(創一のカルテを見ながら)でもこの人、基本的に射撃系みたいだよ?《飛礫》使ってるらしいし。
誠:まあ、それは特殊な例っす。
わざわざキュマイラにとって不得意分野である射撃型を戦闘スタイルに取るオーヴァードは少ないっす。
《完全獣化》しないキュマイラは意外と多いっすけどね。
創一:……まあ、俺の場合はその『特殊』な例として覚えておいてもらっても構わんぞ。
『戒め』のようなモノだからな、俺の戦い方は。
雅之:キュマイラの場合は特に、その肉体を最大限に利用した戦い方が主流になるだろう。
それ以外の戦い方をする場合は、覚悟が必要だな。
では、最後にカルテを見てもらうことにしようか。
キュマイラシンドローム発症者
エグザイル
誠:次はエグザイルっす。腕がびよーんと伸びるっす、髪の毛もうねうね伸びるっす、爪もしゃきーん、と伸びたりするっす!(無意味にえばる)
というわけで、実演として腕伸ばしてみるっす!(なにやら背広を脱ごうとごそごそ)
雅之:(ハリセンを錬成してツッコミ)ええい、なんだその頭の悪い説明はっ。
もう少しちゃんとした説明をせんか。
というか実演すなっ。モニター前の視聴者が引く。
慎一:(そんな二人を横目で見ながらとりあえずスルー)えーと、キュマイラと同じで肉体変化系のエフェクトを豊富に保有するシンドロームだよ。
攻撃以外にも、情報収集に役立つエフェクト《壁に耳あり》《異能の指先》や変装に役立つエフェクト《物質変化》、《擬態の仮面》、
色々な所に侵入するためのエフェクト《鍵いらずの歩み》《十徳指》もあるんだよ。
創一:キュマイラとは違って、搦め手系の攻撃エフェクトが多い。
自分の体の一部を相手に埋め込んでじわじわと相手をいたぶる《餓鬼魂の使い》、ダメージに加えて相手の戦闘能力を下げる《吸収》、
攻撃と同時に武器を絡め取る《エンタングル》、肉体を変形させてトリッキーな攻撃を仕掛ける《マルチアタック》、《貫きの腕》等だ。
雅之:髪の毛を伸ばして攻撃し、当たれば相手が転倒する《踊る髪》、腕を伸ばして攻撃する《伸縮腕》、
爪を伸ばして攻撃力を引き上げる《爪剣》は見た目の割には比較的オーソドックスなエフェクトだな。
他に、自分の使えるエフェクトを一時的に対象が使えるようにする特殊な支援エフェクト《融合》、
他のオーヴァードが使ったエグザイル以外のエフェクトをコピーして使用出来るエフェクト《異世界の因子》もある。
所持しているエフェクトによっては支援型も可能かもしれんな。
少々、エフェクト使用時の見た目がグロテスクである事も特徴と言えば特徴か。
誠:何気にエグザイルのオーヴァードを敵に回す発言っすよ、それ(ぼそり)
攻撃、情報収集、あとトリッキーなエフェクトが諸々でバランスは取れていると思うっす。
問題はこれを生かすためにはピュアブリードのオーヴァードだと少々厳しいって事っす。
あと、エグザイルは総合的な攻撃力も低いっすよ。搦め手エフェクト中心である事の弊害っすかねえ。
雅之:ブラム=ストーカーとのクロスブリードが理想的だな。
白兵の場合、モルフェウスとの相性も良い。
誠:(後ろで決めポーズを取っている)
雅之:(白いチョークを錬成して誠に向かって投げる)
ブラム=ストーカーとのクロスブリードと言えば、久路洲市の支部長“OZ”が良い例ではないだろうか。
(→を参照してくれたまえ)
従者を使って行動している際は実に理想的な働きをしてくれるぞ、先程説明した諜報系エフェクトは。
慎一:だねえ。あと、エフェクトのタイプから言ってRC攻撃型や交渉型はちょっと難しいと思うよ。
特にRC攻撃系は自爆エフェクトしかないから。
創一:射撃もそれなりに使えるエフェクトはあるが、やはり白兵型か情報収集型だろうか。
情報収集型は先程も説明した通り、クロスブリードでなければ辛いが。
カバーリングを行うタイプのオーヴァードもいる。
《崩れずの群れ》や《歪みの体》のようなエフェクトを駆使しているようだな。
雅之:では最後に、いつも通りカルテを出しておくか。
エグザイルシンドローム発症者
ハヌマーン
雅之:さて、次はハヌマーンだな。簡単に言えば音を操るシンドロームだ。
また、俊敏な肉体能力を発揮するエフェクトも数多く保有している。
クロスブリードならばどの戦闘タイプでもやってやれない事は無いな。
創一:白兵および射撃ならばエグザイルおよびノイマン、RC攻撃ならオルクス、バロール辺りと相性が良いように思う。
交渉による支援ならノイマン、交渉攻撃型ならソラリスだな。
データを読み込んでみたが、やはりクロスブリードのオーヴァードの方がポテンシャルは高い。
音を媒介としてエフェクトを発動するタイプであるせいか、どの戦闘タイプでも無難にこなせるようだ。
慎一:高周波で相手の聴覚を一時的に麻痺させる《混乱の波》、音と振動を利用して遠くの対象に干渉できる《七色の声》、
周辺全域に振動波の攻撃を加える《サイレンの魔女》、相手の音と対の波を生み出して音を消し去る対ハヌマーン用エフェクト
《沈黙する世界》が代表的エフェクトかな?
誠:俊敏な肉体能力を発揮するエフェクトの代表といえば一瞬で相手に近づいてそれと同時に攻撃する《一閃》、
アクロバティックな動きで攻撃を避ける《アクロバット》、圧倒的な速度で行動を行う《先手必勝》、
ハヌマーンの肉体能力を最大限に生かした超高速の連撃を繰り出す《マシラのごとく》っすかねえ。
いや、《マシラのごとく》は肉体系じゃなくても使えるんすけどね。
雅之:他の肉体系シンドローム、キュマイラやエグザイルと違って極端に肉体の変化が起こりにくい為、
エフェクトを使用しても目立ちにくいシンドロームではあるな。
創一:なお、ハヌマーンは情報収集および交渉用エフェクトも保有している。
心地よい高周波を伴った声を出す事が出来る《エンジェルヴォイス》、対象のみに声を聞かせることが出来る《風の渡し手》、
広範囲の音から情報を引き出す《ベーシックリサーチ》の三つだ。
誠:何気にハヌマーンも電波系?(ぼそ)
慎一:ハヌマーンの人達を敵に回すよ、それはっ?!(あたふた)
雅之:(何事も無かったかのように)さて、カルテを見てもらうことにしようか。
ハヌマーンシンドローム発症者
一時閉幕-授業中断-
雅之:さて。随分、シンドロームの解説が長くなってしまったな。
慎一:一時中断するの?
創一:そうだな、モニター前の視聴者も少々疲れていることだろう。小休止を取ってもらう事にしよう。
誠:じゃあ、僕らも休憩出来るんすか?(目きらきら)
雅之:いや、すぐに続きを収録する。時間が押しているからな。
誠:えー(露骨に不満そうな顔)
慎一:それじゃみんな、続きはまたあとでねー(手をぶんぶん振る)
画面が徐々にブラックアウト。
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